第86号 バイオエタノールの「不都合な真実」その3(メルマガバックナンバー)

第86号 バイオエタノールの「不都合な真実」その3

2007年3月16日発行

「地球にやさしい」、「安全・安心」こんなキャッチフレーズで販売される 商品やサービスが増えてきました。環境への関心が高くなることは結構なこと ですが、全体の中のごく一部分だけを取り出して、「環境に良い」とか「安 全」と言ったりするのは、トウモロコシのエタノールと同じで問題があります。

有機農業や自然食は、食の「安全」を保障するものなのか?

「天然○○」の表記の“天然”は適切な表記なのか?

添加物は、「買ってはいけない」のような本が大騒ぎするほど悪いものなのか?

私より詳しい人がメールマガジンや本、HPを作っています。興味のある方、 下のサイトをぜひご覧ください。


アメリカのブッシュ大統領が打ち出したバイオエタノール増産計画について、この ところ書いています。

バイオエタノールはトウモロコシから作ったブドウ糖を発酵させて作りますが、原 料のトウモロコシの生産からエタノールの生産までの工程で、生産されるエタ ノールよりも多くのエネルギーを消費してしまうことがわかっています。

科学的、論理的に考えれば、全く意味のないことなのですが、ブッシュ大統 領は温暖化対策と中東への石油依存を減らすためということで、エタノールの 増産をしようとしています。それは一体どういうことなのか、今回見ていきた いと思います。

アメリカがエタノールの生産、それもトウモロコシを原料としたバイオエタノール の生産を拡大しようとしている背景には、経済の論理が関係しています。

2003年の統計で、アメリカはトウモロコシの生産に、100億ドルもの補助 金を出しています。その補助金のほとんどは、大規模な企業的な生産を行う生 産者のところに行きます。そしてこの補助金額は、バイオエタノールの増産計画によ ってさらに引き上げられようとしています。

エタノールへの需要増加と旱魃が重なることによってトウモロコシの市場価 格は大幅に値上がりしました。昨年1年間で81パーセントの値上がりをした ということです。

現在、ブッシュルあたり3ドル強くらいですが、96年の1ブッシュル 5.545ドルに近い数字5ドル程度にまで上昇するのではないかと見られています。

2008年度のアメリカ産トウモロコシは、その半分がどうやらバイオエタノール製造 のために使われることになりそうです。

アメリカにはエタノール製造所は110ヶ所あり、年間53億ガロンのエタ ノールを生産しています。新設や拡張予定の製造所が79ヶ所あるため生産能 力は、今後2年間で60億ガロンに拡大する見通しです。そしてこのバイオエタノー ルのガソリンへの混合を義務付けるなどして需要を維持しようとしています。

アメリカではエタノールの製造にも補助金が支払われます。2002年の数字で すが、11億ドルが使われました。実際にはガロンあたりで52セントという 連邦税額控除というかたちになるようですが、多額の税金をエタノール製造に つぎ込むことで、安い価格を維持していることになります。

トウモロコシは、単位面積あたり小麦の3倍の収入になります。といっても それは高い補助金をもらっているからなのですが。それで多くの農家がトウモ ロコシの生産を拡大するようになりました。土壌の疲弊が進み、暑い季節に育 つ作物で丈が長くなるため水を大量に消費し、肥料もたくさん使う作物なので すが、お金になるために皆が作るようになりました。それで生産過剰になり相 場が下落。それをなんとかしようということで、これまで見てきたエタノール 増産計画を推進しようとしています。

トウモロコシの生産者農家の団体は、ワシントンへのロビー活動が強く、ブ ッシュ政権は自分たちの支持基盤に対しての利益供与として地球温暖化対策に 名を借りたトウモロコシによるエタノール増産を計画しているのです。

エタノール増産を発表したブッシュ大統領の演説後、狙い通り投機マネーが トウモロコシ市場に流入し、相場が値上がりしています。

割を食ったのはメキシコの人たちです。前号にも書いたとおり、アメリカか らの輸入トウモロコシで作られる主食のトルティ−ジャが値上がりし、人によ っては1日の収入の3分の1にもなってしまうような状況になりました。

メキシコは古代からトウモロコシを主食にしてきた地域で、トウモロコシ生 産の盛んな地域でした。が、1994年のNAFTA発効以後、アメリカから大量の安 いトウモロコシが入ってくるようになりました。安いといっても多額の補助金 に支えられた安さ、環境に対する適切なコストを支払わないが故の安さなので すが、これによりメキシコ国内のトウモロコシ生産は、大きなダメージを受け ることになりました。

1500万人の農民が生活できなくなりました。その一部はアメリカへの不 法移民になっています。コスト面からアメリカのトウモロコシにかなわないた め、メキシコでは本来なら自給できるトウモロコシを、アメリカからの輸入に 頼るようになりました。そこに襲ってきたのが今回のエタノール増産計画によ るトウモロコシの価格高騰です。

一見、良いもののように見えてしまうバイオ燃料エタノール。確かにエタ ノールそのものは低公害のエネルギーではあるでしょう。が、その原料の生産 から加工、そして環境全体への影響や影響を受ける人の生活も含めた全体とし て見ると、とても「地球にやさしい」といえるようなものではありません。

ライフサイクルアセスメント

これまで見てきたような、できあがった製品のような局所部分だけではなく、 全体的に考えて環境に良いか、悪いかを判断する方法を、「ライフサイクルア セスメント」といいます。

たとえば、トウモロコシから作るバイオエタノールのように、消費者が使う部分だ けを見れば環境に優しかったり、安全だったりしても、全体として見ると大き な問題があるものが存在します。その商品の原料を生産するところから、製造、 流通、販売、消費、そして廃棄まで含めた全体を見て環境に良いか悪いかを判 断する手法が、ライフサイクルアセスメントです。

ライフサイクルアセスメントの面から考えてみると、「環境」を売り物にす る商品が、必ずしも宣伝文句どおりでないことがわかってきます。

温暖化問題がさかんにマスコミを通じて宣伝され、二酸化炭素の排出を抑え ることが、そして京都議定書の削減枠を守ることが、国策のようになっていて、 現在さかんに太陽光や風力のような代替エネルギーとか、ハイブリッド車など の環境を売り物にした商品の開発が、官民あげて行われています。

が、全体的な視点、ライフサイクルアセスメントの面から考えてみると、多 額の税金がムダになるだけで、環境にとってはむしろマイナスになるようなも のが数多く見られます。いやむしろそんな非効率、不経済なものだからこそ、 ムダな道路やダムを作る公共事業と同じで、それに関わる企業が儲かるのです。

環境や温暖化に名を借りた新たな公共事業。ライフサイクルアセスメントの 視点から見ないとその実情がわからないため、できあがった製品のような局所 的な部分“だけ”を見て、「環境に良い」と人は思ってしまいがちです。

実際には温暖化が本当に人間が二酸化炭素を大量に排出したからなのかどう か、科学的には断定できないものです。学者の中には「大きな火山が一つ噴火 すれば、人間による二酸化炭素の削減努力なんて、いっぺんに吹き飛んでしま う」という人もいます。

それに京都会議で決まった削減量をすべて達成したと仮定して計算しても、 その程度の削減では、とても地球の環境に影響を与えることはできないともい います。

二酸化炭素の削減義務を達成するためには、排出権取引とか、その他京都会 議で認められた様ざまな削減プログラムを実施する必要があります。そのため には、トウモロコシのバイオエタノールどころではない、巨額のお金が動くことにな ります。

ライフサイクルアセスメントは、環境問題を考えるうえでとても重要な考え 方ですが、地球温暖化のような大きなテーマだと、考えるのが難しいかもしれ ません。

でも、合成洗剤なら身近なことなので、わりと簡単に理解ができるのではな いでしょうか?

いまだに「石けんが環境に優しくて、合成洗剤は環境に悪い、危険」と考え ている人がいます。確かに一面的にはそういえなくもありません。しかし、ラ イフサイクルアセスメントで考えると、どちらが良いとか悪いとか、単純に判 断できるようなものではないことがわかります。 下のページをぜひお読みください。

バックナンバー

参考:

編集後記

私たちが普段買い物をしたり生活のために使っているお金は、世界に存在す るお金の1パーセントほどでしかありません。世界に存在するお金の99パー セントは、投機のために使われるお金です。

この投機マネーが今、温暖化市場を狙っています。というか京都会議そのも のが投機マネーを動かす人間に都合が良いように仕組まれたとさえ言えるでしょう。

お金がないから貧しいのではなく、お金のある人間がさらに儲けることしか 考えていないから、貧しい人たちが減らないのです。

「温暖化防止」や「環境」をうたい文句に、無用な公共事業や環境技術の受 け入れ先として途上国が利用されようとしています。途上国に木を植えて、 「温暖化防止に力を入れています。」と宣伝している企業も、そんな来たるべ き排出権ビジネスをにらんで、自社の排出枠を確保することを狙っています。

環境のことを考えるのはとても大切ですが、大げさなマスコミ報道に流され ないで、冷静に判断するようにしましょう。そのためにも、ライフサイクルア セスメントの考え方が必要です。

IPCC以外の情報から、地球温暖化を検証する本

「地球に優しく」が未来を奪う。
“環境”で強迫するまやかしのエコ。

マスコミ報道は、いわば温暖化利権に都合の良い、恐怖をあおるものばかり。
本当に地球は温暖化しているのか?

温暖化は本当に人間の活動が原因なのか?科学的に検証している本です。


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