第73号 フェアトレード・チョコレートのおいしさの秘密
2006年10月14日発行
当店で扱うフェアトレードのチョコレートは、ボリビアの生産者の作ったカ カオと、フィリピンのネグロス島の農民たちが作った「マスコバド糖」と呼ば れる粗製糖を原料に、スイスのチョコレート職人の家族経営の小さな工場で作 られています。
製造にはスイス伝統の職人技術が使われ、とてもおいしいチョコレートに仕 上がっています。
前回のメールマガジンにも書きましたが、このフェアトレード・チョコレー トは、一般のチョコレートよりも融けやすいために、気温の高い時期には扱う ことができません。
それでもとてもおいしいチョコレートなので、夏の時期でも「欲しい」とい うお問い合わせが何件も来るのですが、そもそも夏の時期には輸入をされてい ないので、残念ながらお送りすることはできません。
フェアトレード・チョコレートが暑さに弱い理由は、カカオ分のみを油脂原 料にしているためです。
代用油脂・乳化剤を使わないチョコレート
チョコレートの主原料は、カカオマスとココアバター、砂糖です。
このうち「カカオバター」が油脂原料ということになります。フェアトレー ド・チョコが「カカオ分のみを油脂原料としています」とわざわざ断っている のは、一般のチョコレートには、油脂分として大豆油やパーム油のような植物 油が多く使われているからです。
チョコレートの油脂分であるココアバターは、融点低いために体温程度の温 度でも融けてしまいます。そのため気温が高い時期にはチョコレートが軟らか くなってしまうため、販売することができなくなってしまいます。そこで、カ カオバター以外の植物油を加えることで、それを防いでいるのです。
それともう一つ、代用油脂を使うとコストを抑えることができ、安いチョコ レートが作れるという利点があります。
本来はチョコレートというものは、ココアバターのみを油脂分として作られ るものであるため、ココアバターの代わりに使われる油脂は、「代用油脂」と も呼ばれます。
代用油脂を使うと気温が高くても軟らかくならないという利点が確かにある のですが、チョコレート本来の味が損なわれることにもなります。その点フェ アトレードのチョコレートは、ココアバターを100%、油脂分として使って いるために、チョコレート本来の味を楽しむことができます。
一般に「チョコレート」として売られている商品の中には、代用油脂や乳脂 肪分などの割合がそても多く、カカオ分を数パーセントしか含まないものがあ りますが、フェアトレードチョコレートは、ミルクチョコやヘーゼルナッツ・ チョコなどで32%以上、ビター・チョコだと59%以上、スーパービター・ チョコでは、85%以上ものカカオ分が含まれています。
カカオの含有量が多いだけに、本当にカカオの味がよくわかるチョコレート です。一般のチョコレートよりも、かなり味が濃い感じ、特にビターチョコや スーパービターチョコは、カカオマスも加えたカカオ分が多いため、お腹にた まる感じがします。
さらに、チョコレートの製造の中で原料とともに重要になるのが、「練り」 の工程です。原料のカカオマス、ココアバター、砂糖を練り合わせる作業のこ とです。
一般のチョコレートは、代用油脂(植物油)を使っているほかに、この練り の工程もかなり省略した形で行われています。かなり高級なチョコレートでも、 24時間程度の練り時間なのに対し、フェアトレード・チョコレートは、72 時間もかけて、チョコレート職人の納得のいくなめらかさになるまで練り合わ されます。
しかし、日本で一般に売られているチョコレートは、コストの問題もありこ の練りの工程に時間がかけられないために、大豆レシチンのような乳化剤を使 っています。代用油脂を使い、練りの工程も省略すれば、確かに安いチョコ レートを大量生産することができます。これによりチョコレートが一般庶民に まで普及したとも言えるため、「悪い」とは言いませんが、やはりチョコレー ト本来の味ではなくなってしまうのは確かです。
フェアトレード・チョコレートは、じっくりと長い時間原料を練りあわせて このチョコレート独特のとろけるような舌触りを作っているのが一般のチョコ とにお違いです。
良い原料を使っていること、伝統的な製造法を守り、練りの工程にたいへん な時間をかけた作り方をしているのが、フェアトレード・チョコレートのおい しさの秘密です。
カカオマス、ココアバターとは?
ここで用語の解説をしましょう。
児童労働や生産農民の貧困などが問題視されるカカオは、フェアトレードに よる農民支援が以前からさかんに行われてきた作物です。しかし、カカオを豆 の状態で、私たちが消費することはありません。必ずチョコレートとかココア とか、カカオ製品になったものを消費することになります。
カカオ製品にはカカオマス、ココアバター、ココアパウダーがあります。こ れらには次のような違いがあります。
| カカオマス | カカオ豆の皮と胚芽を除いてすりつぶしたもの |
| ココアバター | カカオ豆に40〜50%含まれている脂肪分 |
| ココアパウダー | カカオマスからある程度脂肪分を取り除いたもの。 カカオマスには約55%の脂肪分(カカオバター)が含まれる。 |
ココアパウダーは、一般的に「ココア」、または「ホットチョコレート」と いった名前で売られているもので、日本で売られているものは、ミルクや砂糖 が入った調整ココアであることが多いように思います。
カカオ以外の原料について
フェアトレード・チョコレートには7種類あります。ビター、スーパービ ター、へーゼルナッツ、レーズン・カシューナッツ、ミルク、オレンジ、ホワ イトクリスピーの7種です。
このうちビターとスーパービターは、カカオマスとココアバター、砂糖のみ が原料となるわけですが、他の種類のチョコレートには、ミルクやナッツ、 レーズンなどが使われています。
フェアトレード・チョコレートは、こうした原料もフェアトレード、または ヨーロッパの認定機関で「オーガニック」と認定されたものを使っています。
ホワイト・クリスピーチョコに使われている砂糖は、コスタリカの農業協同 組合「コーポアグリ」の生産者が作ったサトウキビから作られた白砂糖です。 もともとはコーヒーの生産者貴組合だたのが、価格変動の大きいコーヒーのリ スクを分散させるため、1974年に精製等(白砂糖)生産用のサトウキビの生産 プロジェクトを始め、小規模農家の支援を行っています。
レーズン・カシューナッツチョコに使われるカシューナッツは、ブラジルの 小規模農家の協同組合「コーペルカジュ」のもの。1974年にブラジル政府がセ ラ・ド・メル地方で行った小作人の定住プロジェクトが突然中止になり、放り 出された入植者たちを救済するプロジェクトがスイス、ブラジルの有志の手で 始まり、現在カシューナッツをフェアトレードによって輸出するようになって います。
同じくレーズン・カシューナッツチョコに使われるレーズンは、南アフリカ の生産者が作ったもの。生産者の住む同国南西部のオレンジ・リバー地方は、 穀物生産には向かない土地で、農民たちはブドウ栽培で収入を得ています。彼 らの作ったブドウ(レーズン)は、Sauth Africa Dried Fruits Industry (SAD)を通してヨーロッパに輸出されます。
ホワイト・クリスピーとスーパービターには精製糖(白砂糖)が使われてい ますがそれ以外のチョコレートに使われる砂糖は、フィリピンのネグロス島で 昔から作られていた粗製糖、マスコバド糖を使っています。同島でサトウキビ を作る農民たちが80年代に砂糖の国際価格の暴落により飢餓に陥りました。 彼らを支援するために始まったのが、マスコバド糖のプロジェクトです。
そのほか、チョコレートに使われる原料のミルクやコーヒー、ラム酒などは、 ヨーロッパのオーガニック認定団体が認定したオーガニックのものを使用して います。
ただし、日本にはミルクをオーガニックとして認定する法的な取り決めがな いため、ミルクの入ったチョコレートは、「オーガニック」と表示することが できません。
ビターとスーパービターには、ミルクは使われていないため、有機JAS マークが付けられ、「オーガニック・ビターチョコレート」のように「オーガ ニック」の表示がされて販売されています。
他のチョコレートは、日本ではヨーロッパとの法制度の違いのために「オー ガニック」とか、「有機」という表示はできないわけですが、ヨーロッパの基 準ではオーガニックとして販売できるもので、フェアトレードであるとともに、 実質的にはオーガニック・チョコレートと言える内容のチョコレートであると 言えます。
編集後記
今週はチョコレートの出荷が本格的に始まったので、毎日梱包や出荷作業で たいへんでした。
チョコレートが売れるのはうれしいのですが、割れないように梱包するのが かなり手間で、しかもメール便で送れるようにあまり厚くすることができない ので、ちょっとした技術も要ります。
それでもチョコレートはたいへんな人気商品だし、おいしいし、フェアト レードの入門用には最適な商品なので、販売を続けています。
フェアトレードのチョコレートは、おいしいだけでなく、とても多くのこと を学べる教材にすることができます。
今回お伝えしたように、チョコレートの製造法について考えることもできる し、カカオの生産者が国際相場の下落で苦しんでいること、それに最近日本で も関心が高まりだした、西アフリカのカカオの生産現場で行われている子供を 使った児童労働についても考えることができます。
オーガニックの表記の仕方のように、食品の表示の問題も考えることができ ます。
おいしいフェアトレードチョコレートが、多くの人が世界の厳しい現実のこ と、食の問題のことを考えるきっかけになってくれたらと思います。
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当時他にフェアトレードのメールマガジンはなかったため、
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