第6号 マッチ売りの少女とフェアトレード
2003年12月29日発行
先週まで、自由貿易の問題点を指摘しながら、フェアトレードの必要性をお 伝えしてきました。
こんなメルマガを書いているので、読者の方からよくお便りやメールをいた だきます。「大学でフェアトレードを勉強している」という学生の方が多いで すね。すごいです。最近の大学では面白い授業をしているんですね。私が学生 の頃は、つまらない時間の無駄みたいな授業ばっかりだったので、うらやまし いです。
フェアトレードは、本当に勉強しようと思えば、貿易のシステムの問題とか、 WTOのあり方の問題、環境問題、国ごとの歴史や民族、文化的背景、それ にセールスやマーケティングといったことなど、学ぶことはたくさんあります。
が、一般の人にフェアトレードを知ってもらおうとしてそんな話をしても、 ほとんど関心を持ってはくれません。
先日、フェアトレードを広めようと一生懸命活動していて、なかなか周りの 人に理解してもらえなくて悩んでいる学生の方からメールをいただきました。 ちょっと長いですが引用します。
ふぇあうぃんず斉藤様(注:斉木です)
先日、資料をお送り頂いた***と申します。 資料、ありがとうございました。 とてもわかりやすく、参考になりました。
現在、私は国際協力関係の講座を受講しており、 その中でフェアトレードについて勉強しております。 先週末、実際にネパリバザーロ、シャプラニールなどのフェアトレ商品を、 フリーマーケットで販売してみるということを行ってみました。
フリーマーケットという場がフェアトレの販売に適さなかった ということもあるかもしれませんが、 フェアトレ商品の販売の難しさを実感しました。 まず感じることは、やはり市場価格と比べて値段が高めである、 ということです。 興味のない人達にいくら国際協力の面を訴えても、 なんだかピンときていない感じでした。 色々な人にフェアトレードについての感想を聞いてみた中で、 国際協力に興味のない人には、 フェアトレードが途上国の人々の支援をすることになるという面は、 商品の付加価値にならないのではないかという感想を持ちました。
いただいた資料の中でも、やはり国際協力の面がすごく強調されていたかと思 います。
突然、このようなぶしつけな質問をお送りして申し訳ございませんが、 斉藤さん(注:斉木です!)は、実際にお店を経営されている中で、 上記のようなことを感じられたことはございませんか?
フェアトレードの魅力は、第一に国際協力だと思われますか? 食品やオーガニックコットンは、無農薬、有機栽培をしているため、 環境保護にもつがるし、健康にもいいということはわかるのですが、 それを伝えることの難しさを感じることはございませんか? フェアトレードが今後、日本に浸透していく可能性は大きいと思われますか?
それから、メルマガのお店の紹介欄でお聞きしたいことがあります。
>お店は静岡県の浜松市にあります。ここで営業していて感じるのは、「日 本でフェアトレードを知る人の割合が、5%というのは、多すぎるんじゃな いか?」ということです。
5%は多いと思われますか? ということは、もっとフェアトレードについて知ってもらう必要はないのでし ょうか???
>フェアトレードだとわかっていて買う人なんて、まずそういません。たい ていは商品を見て「かわいい!」とか言って買う人たちです。
これは実感されている感想でしょうか? 少々高くてもかわいい、ということで買っていく人達の方が本当に多いのでし ょうか?
なんとかフェアトレードの可能性を探りたいと思っているのですが、 少々行き詰まりを感じているため、このようなメールをお送りさせていただき ました。
お忙しいかと思いますが、もし何かご意見がございましたら、 簡単でも結構ですのでお返事をいただけると幸いです。
この人は、「マッチ売りの少女」と同じ失敗をしているようです。こうい う言い方をすると怒る人がいるかも知れませんが、あえて書きたいと思います。
マッチ売りの少女は、確か大晦日の日、厳しいお父さんかだれかに、「売れ るまで帰ってくるな!」(どこかの会社のようだ)とか言われて女の子がマッ チを売り行かされる物語です。
少女は結局夜まで売り歩いて、1本もマッチが売れず、凍え死ぬのです。
なぜ、少女のマッチは売れなかったのか?
マーケティングに失敗していたからです。
つまり需要のないところで需要のないものを売ったのが失敗だったのです。
少女は街角で通りすがりの人に、「マッチはいかがですか」と売っていました。
街を歩く人は、別にマッチを買おうとして歩いているわけではありません。 たまたまマッチを買おうと出かけた人と出会えれば売れたのかも知れません。 でも、そんな人に出会うことは、ほとんどないでしょう。
マッチを売りたければ、マッチを必要としている人が集まるところに行って 売る。これがセールスの基本です。少女はそれができていなかった。少女にマ ッチを売らせた親も、それがわかっていなかった。
自分が売ろうとしている商品は、どんな人が必要としているのか?
あるいは、自分の商品を「欲しい」という人は、どんな人なのか?
を考えて、販売戦略を練るのがマーケティングです。少女の親は、まったく そのことが解っていなかった。「営業は足で稼げ!」とかわけのわからないこ とを言うできの悪い上司と同じです。
だから少女のマッチは売れなかったのです。
メールをくれた学生の方は、フリーマーケットに出店してフェアトレードに ついてお客さんに語りました。「世界にはこんな貧しい人たちがいて...」 のようなことを言って。
フリーマーケットに集まる人たちは、どんな人たちでしょうか?
フェアトレードのものが欲しくて集まっているのでしょうか?
国際協力に興味があって、世界の貧しい人たちを助けたいと思って集まって いるのでしょうか?
残念ながら違いますね。
フリーマーケットに集まるのは、安いものが欲しい人たちです。あるいは、 何か面白いものはないかとやって来ます。そんな人たちにフェアトレードや 国際協力、世界の貧困問題について話をしても、ほとんど関心は持ってもらえ ないでしょう。下手をすると、「怪しい」と思われてしまいます。
が、逆にマッチならこういう場所で売れるかも知れません。売り方と値段設 定次第では売れるでしょう。
フェアトレードの商品と、マッチの違いは何でしょう?
フェアトレードは、ほとんど誰も知らないのに対し、マッチは誰でも知って いる商品です。誰も知らないようなものを販売しようとするのは、たいへんで す。説明しないといけません。「この黄色い財布を使えばあなたも大金持ちに なれる!」みたいな商品なら、説明は簡単です。しかし、フェアトレードの商 品にそんな怪しいものはありません。しかもフェアトレードは説明が難しい。
「まず感じることは、やはり市場価格と比べて値段が高めである、 ということです。」
と彼女は言っています。
私は「市場価格と比べ」るのなら、決してフェアトレードのものは高いとは 思いませんが、フリーマーケットの出店者の中では高い方でしょう。値段が高 いのなら、その値段の理由を説明しないといけません。そして、その説明が理 解できる人、商品の価値が理解できる人、見る目がある人にその説明をしなけ ればなりません。
残念ながらフリマは、そういうフェアトレード商品のめんどくさい背景を理 解してくれるような人が集まる場所ではありません。他の出店者の商品がみん な100円とか200円の値段がついているなかで、800円もするコーヒー を売ろうとしても、うまくいかないでしょう。
このコーヒーは、「有機農法で作られていて、認証済みのオーガニックで」 なんて説明しても、関心のない人には何のアピールにもならないでしょう。
「色々な人にフェアトレードについての感想を聞いてみた中で、 国際協力に興味のない人には、 フェアトレードが途上国の人々の支援をすることになるという面は、 商品の付加価値にならないのではないかという感想を持ちました。」
と、彼女はすごくいい感想を書いてくれています。
そうです。その通りです。それがわかったのなら、「フェアトレードが途上 国の人々の支援をすることになるという面」が、「付加価値」になるような人 たちに対して販売をすればいいのです。
フェアトレードに関心を持ってくれる人たちは、どんな人たちだろう?
フェアトレードのものを「欲しい!」という人は、どんな人なんだろう?
ということを考えて販売戦略を練るのが、マーケティングです。
何を売るにしても、マーケティングの考え方は必要です。今はフェアトレー ドなんて聞いたこともなくても、話をすればわかってくれる人たちは、どんな 人たちかを考えてみるのです。
若者がいいのか、老人がいいのか?
女性がいいのか、男性がいいのか?
学生がいいか社会人がいいか?
一般庶民がいいのか、お金持ちがいいのか?
どんなことに関心を持つ人ならいいのか?
今売れている商品と、フェアトレードの商品の共通点は?
若者と老人では、絶対若者ですね。若い人の方が絶対に新しいものに興味を 持ちます。女性と男性では、女性の方が関心が高いですね。経験的に中年以上 の男性は、ほとんどだめです。お金持ち向けの商品ではないような気がしま す。今までベンツに乗ってウチの店に買い物に来た人はいません。
当店にカタログを請求していただいた方は、わかると思いますが、フェアト レードは海外援助というだけでなく、環境とか安全性といったことにも注意を 払って商品開発をしています。
それなら、そういうことを前面に出して販売をすることもできるわけです。
環境問題に関心を持つ人は増えています。食品の安全性とか、日常使う商品 の安全性についての安全性に対する関心も高まっています。スローフードとか、 スローライフといったことも言われるようになっています。
そんな人たちだったら、関心を持ってくれるでしょう。
既にそんな人たちを対象にした商品が多数売られていて、かなり大きな市場 になっています。値段は高いことが多いです。フェアトレードの商品は、その 中でだったらかなり安く感じられることでしょう。
環境系のイベントとか、学園祭、有機農業関係のイベントなどだったら、出 店してもそこそこ感心を持ってもらえるだろうし、売れると思います。
環境とか安全といったことを売り物にしながら、怪しい商品や会社がたくさ んあります。フェアトレードの商品は、素性の確かなものなので、その点は大 丈夫です。品質面や信頼性では全く問題ありません。そのへんのことをうまく 伝えられれば、売ることはできるでしょう。
「食品やオーガニックコットンは、無農薬、有機栽培をしているため、 環境保護にもつがるし、健康にもいいということはわかるのですが、 それを伝えることの難しさを感じることはございませんか?」
と彼女は書いています。確かに難しい部分はありますが、他の怪しい会社の 商品を売るときのように、ウソとはいわないまでも、ごまかしやトリックを使 って買わせるようなことをしなくてもいいので、その点精神的に楽です。それ に伝えるのは難しくても、商品の質はとてもいいので、買った人はみんな喜ん でくれています。
今、フェアトレードを知らなくても、説明すれば共感してくれる人は、必ず います。たくさんいます。この人たちは、私たちからの情報が欲しいと思って いる人たちです。情報を欲しがっている人すべてにフェアトレードのことを知 らせているとは、今の時点では絶対に言えません。まずそんな人たちに伝えて いくのが先ではないでしょうか?
マッチが欲しくない人を追いかけまわすより、数は少なくてもマッチが欲し い人に丁寧にマッチを売り続けていくことが必要だと思います。
そんな考えで私はこのメルマガを発行しています。
編集後記
マッチ売りの少女は、需要のないものを需要のないところで売ろうとして失 敗し、ある大晦日の夜亡くなりました。フェアトレードに限らず、どんな運動 でも活動でも伝える相手を間違えたら、伝わるものも伝わらなくなります。
フェアトレードは、理念的な側面から語られることが多く、あまりこうした ビジネス、商売的な観点から一般に語られることは多くありません。が、フェ アトレードは、日本国内で、途上国の人たちが作った物を販売することで、利 益を彼らに還元するものです。少しでも多く販売をしていく必要があります。
だからといって、儲け主義になるのではなく、また買う人の善意に頼り切る のではなく、商品を買って使う人のことも考えて商品作りをしているのが、フ ェアトレードです。
当店にカタログなどの資料請求をしていただいた方は、おわかりだと思いま すが、フェアトレード商品は、理念的ことを抜きにしても買いたくなるような とても魅力的なものです。安全性や環境に配慮して作られ、しかもファッショ ン性がある商品です。
「安全性とファッション性の両立」をさせていることが、フェアトレード商 品の大きな特長です。
他にはない、優れた特性のあるフェアトレード商品について、それから今回 伝え切れなかった点について、次回もマーケティング的な側面からお伝えした いと思います。
今年最後のメルマガです。
皆さん良い年をお迎えください。
来年もよろしくお願いいたします。
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ドの話」は、
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当サイトの管理人の斉木は、2003年11月より、
フェアトレードをテーマにしたメールマガジンを発行しています。
当時他にフェアトレードのメールマガジンはなかったため、
これが日本初のフェアトレードのメールマガジンということになります。
内容は、フェアトレードや貧困問題に関する最新情報を、わかりやすく解 説したり、 児童労働、奴隷労働、貧困といった問題も、背景知識のない方でもわかるよう、 具体的に、わかりやすく解説したりするもの。
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