フェアトレードの「生産者」とは誰か?1〜生産者団体と実際に作る人
「この商品を買っていただくことは、それを作る途上国の貧しい生産者の人たちの支援になります。」
こんなフレーズを、フェアトレード商品の宣伝でよく見ます。
この言葉を聞いて、
生産者って誰?
何をやっている人?
ほんとに貧しいの?
何で支援になるの?
いくら生産者に支払うの?
とうるさく聞いてくる人は、今までいませんでした。とても答えにくいことだし、
丁寧に説明しようとするとかなり時間がかかる。
それに「支援をしてます」と言っているフェアトレード団体でも、
把握していないことがかなりあったりするのです。
だから今までそんな「うるさい」消費者がいなかったのは、 このあたりのことをあいまいにしておけるという点で、フェアトレード会社にとっては幸いでした。
でも、最近はそういうあまり触れられたくないことに興味を持って調べようとする学生が出てきました。
そんな学生の一人から、私のところに質問というか、
「何か知っていることがあれば教えて欲しい」というメールがきました。
簡単に要約すると、 「フェアトレードのカカオの生産者価格や流通経費を教えてほしい」というメールです。
「こんな質問はすぐ答えられるだろう」と思う方がいるかも知れません。
でも、これは質問をした人がどれくらい自分が聞いていることに関する知識や理解があるのかにもよりますが、丁寧にしっかり答えるのはなかなか難しいことです。
ある程度はお答えをしておきましたが、本当に丁寧に答えようとすると、 このメールマガジン数回分くらいの内容になってしまうので、労力的、時間的に不可能で、 簡単に述べるにとどめました。
ではなぜ、答えるのがそんなに面倒なのでしょうか?
まずこの学生の方は、「カカオ豆」の生産者価格とか流通経費などを知りたいということだったのですが、フェアトレードでは豆でカカオを取引することはありません。
また、カカオ豆には殻の付いた加工前の段階の豆と、殻が取れた加工処理後の2種類の豆があります。
こんなカカオ豆とはどんなものか?ところの説明から始めて、 カカオ豆の製品化に至るまでの加工過程や加工後の製品の用途、チョコレートに加工され輸出、 日本に到着、通関、倉庫に搬入、チェック、出荷といったところまで説明すると、たいへんな仕事になってしまいます。
それでそんなに多くの加工過程、流通過程を経て製品化され、
販売されるカカオ(実際にはカカオ製品として取引される)を、
実際に生産している生産者はいくらくらいのお金をもらっているのか?ということになるのですが、
この質問は、答えるのがかなり面倒なのです。
そして、具体的な金額を把握している人は、たぶん日本にはいないでしょう。
まず、生産者のことから説明しましょう。
「生産者にいくら払っているのか?」と聞く人は、 「生産者」という言葉をどうとらえているでしょうか?
多くの人は、実際に製品を作っている人たちのことを、「生産者」と思っているでしょう。
確かにそうです。
実際に製品作りに関わる人たちも、もちろん生産者なのですが、
フェアトレードで「生産者」という言葉を使う場合には、「生産者団体」であることもかなりあります。
生産者団体とは、生産者(言葉がわかりづらい。実際に物を作る人)の支援を行う活動を行う現地の団体、NPO、生産組合などのことです。
実際に製品を作っている人たちや、コーヒー、 紅茶やカカオといった農産物を作っている「生産者」の人たちは、製品や作物を作ることはできても、 それを自分で販売するために、日本のフェアトレード団体と打ち合わせ、交渉を行ったり、 日本などに輸出するための手続きなどを行うノウハウや知識はありません。
それに彼らは現地語しか話すことができず、英語がわからないので、 日本やヨーロッパなどのフェアトレード団体のスタッフとのコミニュケーションを取ることができません。
また、実際に製品を作っている生産者は、電話もFAXも、Eメールも持っていない/使えないので、
彼らと直接生産する商品についてのデザイン、仕様、出荷形態、
時期などについて打ち合わせをするのは不可能です。
そのため、日本のフェアトレード団体のスタッフが、
実際に現場で製品を作っている人たちとそうしたやり取りをすることは、
通常はありません。(団体にもよりますが)
かわりにそうした仕事を行うのが、「生産者団体」と呼ばれる現地のNPOなどのグループです。
よくフェアトレード商品の紹介で、「ネパールの生産者○○の製品です。」といったようなものがありますが、この○○にあたるのが、生産者団体です。
生産者団体の多くが、インド、バングラディシュといった、女性や子供、 障害者などの人たちが弱い立場におかれている途上国で、彼らのような人たちを経済的に、 精神的に支援する活動を行っています。
農村で女性たちの地位向上を目指す団体。
ストリートチルドレンを支援し、彼らに住む場所と教育を与えている団体、
植林など環境のことを考えて活動している団体もあります。
農民が自分たちの利益を確保し、生活を向上させるために作った協同組合もあり、
生産者団体の中にはいろいろな活動を行う団体が
あります。
日本のフェアトレード団体は、こうした生産者団体と商品開発のために何度もサンプルをやり取りしたり、消費者からのクレームを伝え、改善を求めたりしながら生産者の技術を向上させ、魅力的で売れる商品の開発をしようとしています。
質問をくれた学生の方は、カカオについて調べているということでしたが、
先ほど述べたように、カカオは豆では取引されません。
カカオバター、カカオマス、ココアパウダーといったカカオ製品に加工されたうえで、
またはチョコレートに加工されたうえで輸出されたり、国内で販売されたりしています。
その加工を行っているのが、生産者団体です。当店で扱うフェアトレード・チョコレートの場合には、 「エルセイボ」というボリビアの生産者(団体)がそれにあたります。
エルセイボは、農民たちが困窮状態から脱却しようと自分たちで作った生産者組合で、 農民へのカカオの栽培指導から、収穫されたカカオ豆の製品への加工、 輸出や販売などを行っている生産者団体です。
ではそのエルセイボという生産者団体は、いったいカカオの生産者たちにいくら支払っているのか?
わかりません。
私はフェアトレード会社にいたころ、エルセイボのカカオマス、 ココアバターを原料にして作ったチョコレートや、ココアパウダーをさんざん売っていましたが、 そして今でも売っていますが、そんなことは気にしたことがありませんでした。
フェアトレードに関わる者として、いかがなものか?
という疑問や批判はあるかも知れませんが、私の後輩たちも、
たぶん誰もそんなことは気にしていないでしょう。
忙しいから。
フェアトレード関係者の過酷な労働環境については以前書きましたが、
本当にそんな細かいことを気にしていられないくらい面倒な仕事がたくさんあるのです。
普通に商品を輸入して販売するだけでもかなりたいへんな仕事になるのに、
途上国の生産者(団体)の支援という側面があるがために余計に煩雑になる仕事もあり、
そんな細かいことを気にしている心の余裕がないのです。
生産者団体との取引関係から言っても、あまり細かなことがわからないのは仕方のないことだったりします。
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