自由貿易理論の問題点〜リカードのウソ
貧困と環境破壊を招く自由貿易の問題点を検証する
このページでは、フェアトレード(公正貿易)の対極にあると考えられている、 自由貿易の問題点について説明したいと思います。
今、自由貿易は世界中で失業や貧困、環境破壊を引き起こしています。
にも関わらず自由貿易を世界がやめないのは、
「比較優位」という経済学の考え方を信じているためです。
18世紀のイギリスの経済学者リカードによって提唱された理論です。
比較優位とは、ものすごく簡単に言うと、
それぞれの国でそれぞれ得意なものを作ればいい。
食料を作らなくてもその土地で採れたもので稼いで、輸入すればいい」と言う考え方です。
この考え方を「信じている」というより、自由貿易にした方が儲かる人たちがいて、
そういう人たちによって、世界に経済が動かされているから、
みんなで信じているふりをしていると言った方が適切かも知れません。
今の世界で、途上国に貧困などの問題を引き起こしている大きな原因の一つに、
欧米先進諸国による穀物の過剰生産が挙げられます。
先進国では、大型機械を使う大規模な農業が行われ、生産性を上げています。
機械化、効率化が進むとともに、生産量が増大し、自国の需要以上に穀物が生産されるようになりました。
過剰生産を放っておくと、農産物価格が低下し、
農民が失業して都市に流入するなどして社会不安を引き起こしかねません。
そこで、お金のある先進国では、補助金をつけて輸出をするようになります。
補助金にはいろいろありますが、自国の農民に所得を保証したうえで、穀物を輸出相手国の国内価格か、
それ以下の価格にダンピングして売るのが目的になています。
これにより、先進国の農民は救われます。
が、輸出先にも農民はいるわけです。
先進国の補助金付きの安い穀物が入って来るようになって、
アジアやアフリカの途上国での主要産業であった農業が立ち行かなくなりました。
これらの貧しい国ぐにでは、自国の農民に補助金を出すことはできません。
結果、農民たちは輸入農産物に対抗するため、生産性を上げようとします。
先進国のように機械化するのではありません。
より高い生産性を得られる土地を探すことになります。
すなわち森林を焼いて畑を作れば、先進国の穀物に対抗できる価格での生産が可能になります。
が、長くは続きません。
そうした方式の農業は、土地から収奪する農業です。
3〜5年で地力が落ちて養分がなくなり、作物が作れなくなります。
そして耕作が放棄され、また別の場所を探すことになります。
捨てられた土地は、すでに周りの森林もなくなっていて他から養分を供給されることもなく、荒れ果てます。
日本でもそうですが、耕作放棄された田畑は荒れ果ててしまい、回復させるのは困難です。
熱帯では気温が高いために土地の有機物の分解が速く、
土地を覆っていた森林がなくなると雨や風によって薄い表土が流れてしまいます。
場所によっては、砂漠化が進むことになります。
こんなことの繰り返しで、途上国では新たに畑にできる場所はどんどん少なくなります。
行き場をなくした農民は、都市に出てスラムに集まります。
あるいは、大地主のもとで小作人になるしかありません。
でも、地主もそのうち農業を機械化するようになり、人がいらなくなります。
結局農民は失業して、都市のスラムに流れこむことになります。
スラムでは、先進国の食糧援助があるために、貧しくてもとりあえず飢えることはありません。
が、その援助のための食料は、先進国の余剰農産物のはけ口になっているという側面もあります。
先進国の補助金付きの農産物の輸出は、自国農民の保護のためでした。
が、それはアジアやアフリカの生産性の低い零細農民を失業させ、貧困に陥らせる原因となりました。
生産性が低いというのは、それだけたくさんの人に職が与えられるということでもあったのに。
先進国で広く行われている化学肥料や農薬を大量に使い、地下水をくみ上げ大型機械で耕作する農業は、
自然から収奪する農業です。
こんなことで生産性を上げても長続きはしません。
異常気象にでもなればたちまち収穫が激減して、食料の不足を招くことになるでしょう。
先進国こ援助に回せるだけの食料がなくなれば、世界的な食料不足、飢餓が引き起こされます。
かつて途上国で行われてきた農業は、
小規模ではあっても定期的に土地を休ませて行う持続可能な農業でした。
とりあえずは飢えたりすることはなく、自給自足的な生活を送っていました。
そこに入ってきたのが今の先進国による植民地支配です。やっとそこから独立したと思ったら、
今度は先進国から入ってくる安い農産物のために貧困と失業、環境破壊がもたらされることになりました。
途上国の農民が失業したり、貧困に陥ったりする原因には、かつての植民地支配の影響もあります。
植民地支配や今の補助金付き作物の輸出といった、
途上国の人たちにとっては何も良いことのない経済の有り方は、自由貿易の考えに基づくものです。
フェアトレードを行う団体は、ずっと「自由貿易より公正貿易(フェアトレード)を」と訴え、
活動をしています。
では自由貿易の何が問題なのか?そのあたりのことを次にお話します。
自由貿易の問題点〜比較優位のウソ
自由貿易の考え方を作ったのは、200年ほど前のイギリスの経済学者で商人のリカードです。
リカードは、「比較優位」という言葉を使って、
国際分業をすることがすべての国にとって利益になると説きました。
槌田敦著「エコロジー神話の功罪 サルとして感じ、人として歩め」という本に、リカード理論の問題点が わかりやすく解説されているので、この本で示されている考え方を使って、 自由貿易の問題点を探っていきたいと思います。
リカードは「貿易論」という本の中で、イギリスとポルトガルの毛織物と、
ワインの生産性の比較をしました。
その中でイギリスは、毛織物が国内で生産されるワインよりも生産性が高く、
ポルトガルは、ワインの生産性が国内で生産される毛織物よりも生産性が高いと説明しました。
つまり、イギリスでは農業に比べて工業の生産性が高く、
ポルトガルは工業に比べて農業が生産性が高いということです。
そこで、それぞれの国で生産性の高い商品を交換すれば、 両方の国にとって得になると主張したのです。
イギリスは工業国になり、ポルトガルは農業国になれば、両国ともに利益を得ることになる。
これが比較優位という自由貿易、国際分業の理論的根拠となっている考え方です。
でも、本当にそうでしょうか?
もし、リカードが正しければ、今の世界はもっと違った形になっていたはずです。
それぞれの国が比較優位なもの、得意な物の生産に特化し、輸出をしてお金を儲けて、
そのお金で必要な物を輸入すればいい。
そうすればすべての国が利益を得て豊かになれるのなら、
なぜ世界には貧困に苦しむ国ぐにや人びとがこんなにも多く存在するのでしょうか?
カカオの生産が比較優位な国は、カカオの生産に力を集中して、輸出して儲けて、
必要な物はすべて儲けたお金で輸入すればいい。
そうしていれば豊かになれるのなら、コーヒーの生産が比較優位な国はコーヒーの生産に特化して、
それを輸出して必要なものを外国から買えばいいということであれば、
なぜそうした商品作物の生産農家の多くが、貧困に苦しんでいるのでしょう?
コーヒー農家の生活については、「あのスターバックスにも、フェアトレードコーヒーが!」をお読みください。
貧困に苦しむカカオの生産地の中でもとりわけ状況が厳しいのは、
コートジボアールなど西アフリカの国ぐにです。
この地では、のカカオ農園主たちは貧困に苦しんでいるのでしょうか?
なぜ子供たちを奴隷にしなければならないのでしょうか?
世紀の今でも奴隷を使った生産が行われています。奴隷を使っているのなら、給料を払う必要がないから、
農園主は儲けているはずと思うかも知れませんが、農園主もまた貧しいのです。
なぜ、理論どおりうまくいかないのでしょうか?
リカード理論には、ごまかしがあるからです。
先ほどのイギリスとポルトガルの例で言えば、両国内での毛織物やワインの価格は関係ないというのが、
この理論の特徴です。イギリスの毛織物が、ポルトガルの毛織物より高くてもかまわないのです。
イギリス商人は、ポルトガルに行って自国の毛織物をポルトガル価格にダンピングして売ります。
イギリス商人が損するように見えますが、彼らは毛織物を売ることで、
ポルトガルのお金を手に入れることができます。
そのお金で安いポルトガルのワインを買ってイギリスで売れば高く売れるわけで、
商人は利益を得ることができます。
同じようにポルトガルの商人も、自国のワインをイギリスで売れば高く売れて、
それだけ多くのイギリスのお金を得ることができます。
そしてポルトガルで買うより多くの毛織物をイギリスで買うことができます。
比較優位の考え方を使えば、お互いの商人が儲かるというのが、リカードの理論です。
もっとも、商人などという言葉は使わず、もっと学問的な言葉を使って説明し、
当時の経済学者たちを説得しましたが。
比較優位の理論は、経済学者たちが本や学問の世界だけで勝手に議論していてくれているだけなら害はないのですが、世界中がこの理論を信じてしまい、実行してしまったために、様ざまな問題が起こることになりまし た。
現実の世界にはイギリスとポルトガルだけでなく、もっとたくさんの国ぐにが存在します。
毛織物とワインだけでなく、もっとたくさんの生産物が存在し、貿易が行われています。
それに、リカードの理論ではお互いの国が儲かることになっているのですが、
実際に貿易を行うのは国ではなく、貿易商です。
それでもイギリスやポルトガルの商人が活躍して、利益を上げれば、 税金と言う形で国家は利益を得ることができます。が、ここに第三国の商人が介入したらどうでしょうか?
比較優位のウソ〜商人だけが儲かるしくみ
ここで、金と銀の貿易を例として、国際貿易について考えてみたいと思います。
A国とB国があって、A国では金1キロが銀5キロと同じ値段だとします。
そしてB国では、金1キロと銀100キロが同じ値段だとします。
A国:金1キロ = 銀5キロ
B国:金1キロ = 銀10キロ
私がA国の商人だったら、金1キロを持ってB国へ行きます。
そしてその金を売って銀を10キロ買います。
そしてA国に戻って金2キロを買います。A国とB国をただ往復するだけで、
手持ちの金を2倍にすることができます。
B国の商人も、国内で銀10キロを買ってA国に行き、金2キロを買うことで、
手持ちの金を2倍にすることができます。
いづれにしても両国ともに利益を得て儲かるように見えます。が、ここに第三国、
C国が加わると話が違ってきます。
C国の商人10キロを手に入れます。
その銀をA国に持って行けば、金が2キロ手に入ります。
手持ちの金を2倍にすることができるのです。しかし、A国とB国はどうでしょうか?
まずB国は、C国商人が持ってきた金1キロと、銀10キロを交換しただけなので、損得はゼロです。
A国も銀10キロと金1キロを交換しただけなので、同様に損得ゼロです。
両国ともに何の利益もありません。
C国商人だけが一方的に儲かるのです。
これが自由貿易によって商人が利益を手に入れる仕組みです。
実際には関係国であるAB両国は、何の利益も得ていないのに、巧妙なトリックによって、
リカードは両国が儲かると主張し、世界はだまされたのです。
リカードは、お金儲けがうまい貿易商人でした。
だから自分に都合の良い理論を作り出したのです。
自分の理論の矛盾は承知の上で、一人大儲けをしてほくそえんでいたことでしょう。
C国商人を、多国籍企業とします。A、B国はアメリカと日本。
C国商人は、日本で比較優位の自動車を買い付けてアメリカに持っていきます。
そして自動車を売った金でアメリカの比較優位の安い米を大量に買い付けて日本で売ったら...。
こう考えると失業や貧困に苦しむ人が出ることなど、比較優位の理論で様ざまな矛盾、 問題が発生することが良くわかると思います。
次にぜひ、あなたに知っていただきたいのは、代表的な商品作物である、カカオについてです。
おいしいチョコレートの原料になるカカオですが、その生産に、
「奴隷」が使われていることを知っていましたか?
奴隷といっても10代前半くらいの少年の奴隷です。世界最大のカカオ産地、
西アフリカのコートジボアールの奴隷を使ったカカオ豆生産について、
それから自由貿易がもたらした単一栽培も問題点についてをご覧ください。
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