ブランドの影で苦しむ、アジアの女性労働者たち
有名ブランド企業の下請工場で、過酷な労働を強いられている人々
〜フェアトレードで防ぐ、過酷な出稼ぎ労働〜
GAP、リーバイス、リーボック、ナイキ、チャンピオンといったおなじみの有名ブランドメーカーは、
実は国内に自社工場は一つも持たず、製造は途上国の下請け企業にやらせています。
これらのブランド企業は、自国ではマーケティングのみを行っていて、製造はすべて賃金が安く賃金が安く、
労働者保護の規則がゆるい、アジアなどの発展途上国で行われます。
このページでは、ナオミ・クライン著 ブランドなんか、いらない という本の内容を参考にしながら、 途上国の労働者、特に女性たちがいかに搾取的な環境で働いているかをご説明したいと思います。
「ブランドなんかいらない」は、著者自身が東南アジアのブランド衣料品の製造現場に出掛け、
働いている女性たちからの聞き取り調査を行った内容を元に作られた本です。
先進国でもまた、ブランドは悪い意味での社会現象を起こしていることを伝えるたいへん貴重な本です。
ブランド衣料品の主な製造国は、インドネシア、中国、メキシコ、ベトナム、フィリピン、などです。
これらの国では、「輸出加工ゾーン」とよばれる、法人税や固定資産税など企業にかかる税金が免除されている区域があり、衣料品などのブランド企業の下請け工場が集中しています。
輸出加工ゾーンは、世界に約1000ヶ所あり、70カ国でおよそ2700万人の人たちが働いています。
こうした輸出加工ゾーンでは、衣料品やスポーツメーカーの製品の他、IBM、
ゼネラルモーターズなどの製品も製造されています。
こうしたブランドの下請工場での労働環境は、どこの国でも似通っています。
労働は、過酷を極めます。12〜16時間労働で深夜に及ぶシフトがあり、残業手当はないか、
ごく小額しか支給されません。
労働者を搾取する工場ということで、こうした工場は、スウェットショップ、
Sweat Shops(搾取工場)と呼ばれています。
スウェットショップはしかし、輸出加工ゾーン以外の場所にも存在するので、 輸出加工ゾーンだけで労働者が不当に扱われ、搾取されているわけではなく、 都市部などに存在する衣料品などの工場でもそうしたことが見られます。
途上国の労働問題に取り組むアメリカのNGO、Global Exvhange の調査によると、
「GAPの工場では、労働時間は12〜16時間、残業手当は支給されません。
労働者は、「裏の契約書」にサインさせられます。
そして、組合に参加したり、宗教行事に参加すること。結婚することなど、
基本的な人としての権利を奪われた状態で働かされます。
工場内は込み合っていて、ものすごい暑さ、衛生状態も悪く火傷や怪我、感電などの安全対策が不十分です。
住環境も悪く、狭いところにたくさんの人が詰め込まれ、食中毒が大発生したこともあります。
GAP以外の工場、またそれほど名前の知られていない企業の製品を作る工場も、 労働が過酷だということは変わりません。
労働者として働いているのは、主に10代〜24、5才の若い女性です。
企業は高校も出ていない、権利意識の低い彼女たちを好んで採用します。
多くは、農村から出稼ぎに来ている人たちです。
農村にやってきた採用担当者に、「いい条件で働ける。家族に仕送りができる」と言われて連れて来られ、
働いています。
農村では現金収入が得られないので、生活の苦しい彼女たちはやむなく出稼ぎに来ているのです。
フィリピンでは、「工場の仕事」だと騙してマニラの歓楽街に連れて行き、売春をさせていることもあるといいます。
彼女たちは、決して町の生活に憧れて村を出るのではありません。
家族の生活のためにお金を得ようと、やってくるのです。
しかし、実際には得られる給料はごくわずかで、自分が暮らしていくだけでやっとです。
スラム街のようなところに住み、交通費を節約するため歩いて工場に通う人もいます。
その国の最低賃金よりはるかに低い額の給料では、ほとんど家族に仕送りをすることなどできません。
彼女たちの労働形態は、私たちの常識をはるかに超えています。
フィリピンでサッスーンの服を縫うお針子たちは、朝7時から夜10時までのシフトで働きます。
これだけでもとんでもないことなのに、週に2日は午前2時まで残業させられます。
労働者には残業を断る権利はなく、断れば解雇されることさえあります。
中国では、3日シフトというものがあり、労働者は機械の下で寝かされます。
厳しい長時間のシフトの後、労働者が過労死することもあります。
過酷な労働は、注文の締め切りや、大口の注文があったときなどは、さらに激しくなります。
それが出来上がるまで働き続けます。
従業員に、覚せい剤を打って仕事をさせている工場さえあります。
女性労働者たちはまた、暴力や性的な嫌がらせも受けています。
時には命の危険にもさらされます。
トイザラスにある楽しげな、子供たちが喜ぶ商品たち
それを見て作っている労働者たちの過酷な労働を思い出す人はほとんどいないと思います。
が、1993年5月に起こった、この会社のおもちゃを作る工場で起きた火災は悲劇的でした。
火事はバンコクの工場で起こりました。
非常口は他の同様の工場と同じでモノが置かれるなどして使えず、
工場のドアには組合化を防ぐために常に鍵がかけられています。
そんな締め切った工場内に、燃えやすい素材があり、火は一気に広がりました。
死者188人、けが人が469人も出ました。
バングラデシュのダッカにある衣料品工場でも、同様の火災事故があり、
多くの女性労働者が焼死しました。
大惨事になった原因は、やはり鍵がかかったドア、窓の鉄格子、つかえない非常口でした。
もし、こうした工場がぎりぎりまで労働者を搾取するのではなく、 もっと働く人の権利を守っていたら、こうした悲劇は防げたはずです。
「発展途上国でたくさんの労働者が、ブランド企業の製品を作るために搾取されている」という問題は、
数年前からアメリカのNGOや市民グループ、研究者などから指摘され、批判されてきました。
労働者たちの待遇改善も要求してきました。
これに対し、ブランド企業側では、「自分たちはただ商品を工場から買っているだけ」と、
責任はすべて商品を作らせている工場側にあり、自分たちは関係ないという立場を取ってきました。
ブランド企業側の方から工場に積極的に働きかけ、労働者の待遇を改善しようとはしませんでした。
労働者がもっとも安い賃金で働いているのは、中国です。中国の労働者のが生活していける賃金は、
時給87セントですが、ナイキやアディダスなどの製品を作るいくつかの工場では、わずか13セントとか、
16セントしか支払われていないのです。
これで社会保障もなかったり、サービス残業をさせられたり、
工場によっては24時間シフトをさせられたり、しているのです。
世界有数の大企業が、労働者にわずか87セントの時給も支払うことができないなどということがあるはずありません。
派手なコマーシャルに使うお金があるのなら、
自社の製品を作る労働者にそのくらいの賃金は払えるはずです。
ナイキのシューズ、アディダスのスポーツウェア、
デパートとかスポーツ店で買ったらいくらになるでしょう。
1万円は軽く超える物があるはずです。
1万数千円の商品を作っている労働者の時給がわずか16セント!です。
信じられないくらい低い賃金です。
私たちが、「安い、安い」と喜んで買っている中国製の服は、実は労働者を長時間、 不当に安い給料で働かせたものかもしれません。
ひょっとしたら、あなたが今来ている服は、アジアの女性労働者たちが死ぬほど過酷な労働を強いられて作ったものなのかも知れません。
デパートなどで売られている、ブランドの衣料や靴。
これらも、アジアの女性たちが過酷な労働を強いられて作ったものかも知れません。
最近は「企業の社会的責任」というものが問われるようになり、
大企業はそれなりの社会的責任を果たすことが求められるようになってきています。
特にアメリカでは、市民からのこうした会社への要求が厳しくなっているため、
状況は改善される傾向にはあります。
が、まだまだ不十分です。労働組合を作る自由、ストライキなどの労働運動を行う自由、
がない国がたくさんあります。
ブランドなどの工場が置かれている国で、外貨や失業者の受け入れ先が欲しいため、
自国民である労働者より、外国のブランド企業や、その製品を作る工場の味方をします。
有名ブランドの場合、目立って消費者の関心も高いのですが、あまり名前の知られていない衣料品メーカーなどの場合、なかなか消費者やNGOなどの目が行き届きません。
まだまだ過酷な労働を労働者にさせている工場は、たくさんあります。
そんな世界の途上国の衣料品などの工場で働く人たちの労働実態を丁寧に取材した本ブランドなんかいらないは、急激な経済のグローバル化に反対する人たちのバイブル的存在になっている本です。
世界的にも評価の高い本なので、ぜひ一読をおすすめします。
労働者を守る、フェアトレードの衣料品
フェアトレードはヨーロッパで始まり、当初はコーヒーや紅茶、雑貨を主に扱ってきましたが、
最近は衣料品の割合も増えてきています。
特に日本はまだフェアトレードの歴史が浅く、フェアトレードに関心を持ったり、
フェアトレードのものを購入するのは若い世代が中心です。
ファッションへの関心も高いため、フェアトレードの生産者が作る日本のものとは少し違うデザインや色使い、形の衣料品が少しずつ人気が出始めています。
ヨーロッパなどより売上げに対する衣料品の割合は高くなっています。
日本には、インドやバングラディシュ、ネパールなどから衣料品をフェアトレードで輸入している団体がいくつかあります。
フェアトレードでは、大きな会社や工場などに仕事を依頼することはありません。
地域開発や、生産者の生活の向上を目指している団体や、生産者自信が作った組合に対して発注をします。
フェアトレードが目指すのは、出稼ぎをしなくても、都市の工場に働きに行かなくても人びとが生きていけるようにすることです。
フェアトレードでは、生産者たちが自分の村で働き収入を得ることができるようにしています。
商品開発は、日本と共同で行い、生産者が持つ技術を使って作れるもの、 日本の市場で受け入れられるオリジナル商品を開発しています。
途上国には、現代の日本ではもう珍しくなってしまった、
手作業による技術や生産がたくさん残されています。
手織りで布を作る技術、綿などから糸をつむぐ、手紡ぎ(てつむぎ)の技術、自然の草花などを使ったく先染めの技術、美しい模様を作り出す、手刺繍の技術などです。
フェアトレードでは、こうした伝統の手仕事の技術を生かして製品作りを行い、 一般市場に出回る大量生産にはない、出せない魅力的な製品を作り出しています。
フェアトレードの生産は、服に限らず人の手による生産を大切にしています。
機械を使った大量生産の方法は取っていません。
それは、手仕事の方がより多くの人たちに仕事と収入を与えることができるからです。
自分の村で仕事ができるからでもあります。村に仕事があれば、都市の工場につらい出稼ぎ仕事に出る必要はありません。
村人が豊かになれば子供を働かせたりせず、学校で教育を受けさせることもできます。
手仕事が人びとの生活にとっていかに大きな役割をしているかということについて、 インド独立の父、マハトマ・ガンジーは、こんな言葉を残しています。
手織り布が大衆のためにあるのに対し、
機械生産の布は富裕階級を富ませるためにあるのです。
インドやバングラディシュは、もともと手織り産業がさかんで、その品質はヨーロッパなど、
外国でも高く評価されていました。
生産量も世界有数でした。それがイギリスの機械生産で大量生産した布の輸入が始まると、
インド伝統の手織り産業は、急速に衰えてしまいました。
ガンジーは、近代文明と大型機械こそが、
原料や市場の確保をめぐる争いや貧富の格差を生む元凶であると批判し、インドの民衆に、
伝統的なチャルカ(手紡ぎ機)を復活させることで、イギリスへの依存から脱出しようと呼びかけました。
大型機械は、一部の資本家にしか持つことができません。
チャルカなら、誰でも持つことができます。
チャルカで紡いだ糸によって衣料品を自給することが、自立への道だと説いたのです。
この「チャルカの教え」は、当時は近代化への流れに逆行する勧化として、
当時はあまり受け入れられませんでしたが、ガンジーは自らチャルカを回して生涯この教えを説き続けました。
ガンジーの教えは、現代になって「フェアトレード」というまったく新しい形で実現されつつあります。
まだまだ小さい規模ですが、時代は少しずつこちらの方に流れを変えているように見えます。
今大切なのは、少しでも多くの人がフェアトレードを理解していただき、
1枚でも多くの手織りのシャツが売れるようになることです。それにより、
貧困に苦しむより多くの人たちが仕事と収入を得ることができるようになるのです。
そして何より自分たちの技術、仕事によって収入を得ているという誇りが得られるようになるのです。
自分たちの伝統技術を守り、それを使って製品を作り、収入を得るという満足感、誇りは、 決して都市の大工場での低賃金の単純労働では得られないものです。
もっともっとたくさんの人が、フェアトレードの物を使うようになれば、 それだけもっとたくさんの人たちを助けることができます。
伝統技術が守られ、女性たちがつらい労働をしに出稼ぎに行く必要もなくなります。
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